ひとり言

中小企業M&Aは「投資案件」ではないが、僕は運が良かった

昨日はとても寒く、雨から雪みたいなみぞれになりました。会社を売却した先の社長、つまり僕がもといた会社の新社長とランチをしてきました。二つ記憶に残る話がありました。

一つ目、以前会社を辞めた人が戻ってくるという話。二人とも優秀な人材で、彼らが辞めるといったときは僕なりに一生懸命引き留めたつもりだけど、それでもその甲斐もなく辞めていった人たち。いまでもその時の情景を思い出すことはできるし、そのまま僕の気持ちは少し沈んでいく。僕とそりが合わなかった、僕が引き立てた部下のやり方についていけなかった、だから辞めたんでしょう。いまは僕はいないし、その部下も外された。彼らと連絡を取り続けていた社員がそれを伝えて、戻ってくる。もちろんみんなに好かれることはできない、有能な人材が戻ってきてくれることは会社にとっては良いことで僕もうれしい。それは分かっていても、僕が辞めたあとのこの時期に戻ってこられるのは、少しつらい気分になる。

二つ目の話。昨年一つの事業部の業績が大幅に悪化して赤字になってしまった。まだ赤字が継続しているようで、当社の買収について「高値掴みをしたんじゃないか」ということを新社長から軽く言われた。確かに一昨年までの全事業部黒字決算と昨年は大きく異なっているので、いまの会社の評価額は下がるだろうし、今後のコロナの影響を考えると、さらに企業評価額は落ち込むことになる。純粋に投資案件として考えれば、昨年末に買収したのは一番の高値のときだったと言えなくもない。

はたから見たら一番いい時期に売りましたね、ということかもしれないけど、僕としたらあれ以上は会社経営を続けることができなかった、ギリギリのタイミングで売却しました、そういう話だった。当たり前だけど、中小企業経営は決断一つで右から左に流れるような投資案件じゃなくて、ドロッドロの地べたを這いずり回るような終わりのない泥臭い日々の繰り返し。判断基準が全く違うので、今の事業環境を見て高値掴みですか、確かにそうですね、とは思うけど、それより日々の仕事大変なので頑張ってくださいね、そっちの気持ちの方が断然強い。

高値掴みの話の流れだけど、僕はとても運が良いんだと思う。売却するのがあと半年遅かったら、コロナショックに引っかかって話が頓挫したかもしれない。売却で得たお金を投資に回そうと思っていろいろ銀行を回ってきたけど、ぎりぎりまだ口座開設前なので、大幅な株価下落の影響もほとんど受けず、一方でこれから投資するにはこなれた値段になってきている。これは自分の力でも何でもなく、100%運が良かっただけ、亡くなったご先祖たちのおかげかもしれないすら思う。せっかくいただけた運なのでこれを無駄にすることなく、自分で教訓をしっかりと学んで、今後の生活に生かしていきたい。