日本経済新聞の「パクスなき世界」という特集がけっこう好きだ。今週は「大断層」という切り口で富裕層と低取得者層の格差の広がりをクローズアップしている。行きつくところまで行ってしまうと、最後は革命、既存システムや既得権益の破壊になってしまう。それに気づいたアメリカの超富裕層が、自らへの増税を国に求めるという。
2020年12月23日5面 慶応大教授 竹森俊平氏
『ITによって少ない人数でたくさん生産できるようになった利益が、社会全体に分配されない。低中所得者層の所得が伸びないため、モノやサービスの生産の伸びに需要が追い付かない。そのため資本収益率も上がらず、デフレ傾向になる。コロナ禍によるデジタルシフトでその傾向は強まり、長期停滞がさらに深まる。』
生きていくために必要なものって十分に巷にあふれていて、企業は買い替えを促そうと一生懸命にマーケティングしたり広告打ったりしている。実はもう生産能力は十分すぎる。単純作業しかできない人は一定数存在するけど、そういう人はどんどん働く場所がなくなってしまう。企業の生産力を維持するためにも最後はベーシックインカムしかないのかなという気もする。
2020年12月22日5面 東大准教授 伊藤亜聖氏
『人口の多い国はネットユーザーが多い国でもある。巨大な市場を交渉材料として、巨大IT企業とも対峙しうる。デジタル自体のパワーは中世のように人口規模に規定される面がある。先進国で人口1.3億人の日本よりも2.7億人の新興国インドネシアが交渉力を発揮することもありうる。』
ITや統計学で「個人」が徹底的に薄められた結果、それでももっとも重要なのは人間、それも人口ということ。さらに言えば、人が持っている時間をどれだけ集められるか。ITは少ないリソースで無限に人の時間を集められるから、言語や文化の壁にさえぎられた国境で、人口が多い国はそれだけ魅力的になる。