富裕層のみに開かれた秘密の花園(と思っていた)、プライベートバンクを知りたいという好奇心から始まった今回の勝手リサーチプロジェクト、約2か月かけてある程度のことは理解できたので、ここでいったん打ち切りにしたいと思います。プライベートバンクだけでなく、第三者の意見としてIFAに聞いてみたり、リテール銀行で提案を受けたり、思ったより忙しい日々を過ごしていました。
本やブログでも参考になる情報はあったので、わざわざ恥をかきつつ何度もプライベートバンクに足を運ぶ必要はなかったんじゃないかという気もしますが、その情報が本当に正しいかどうかを見極めるためにも、自分で経験するしか方法がありませんでした。
幻冬舎GOLD ONLINE 山口聰さんの連載記事『金融資産5億円以上!超富裕層のユニークな運用術から学ぶ「資産防衛のヒント」』は、自分の考えや今回のプロジェクトの裏取りにも使えてとても参考になりました。連載も2019年と最近なので情報が新しいです。このブログから抜粋してコメントを添えながら、自分なりのプライベートバンクのまとめとします。枠囲みが連載記事からの抜粋です。
超富裕層ほど利用しているケースが多いものに、保有金融資産を担保にするローン商品があります。これは何かの投資チャンスに対して機動的に動きたい場合、保有金融資産を換金することなく、たとえば1%で借り入れ3%で運用できれば合理的、というような考え方に基づく商品です。
秘匿性が失われた現代のプライベートバンクで、プライベートバンクを利用する大きなメリットの一つが、投資した株式や債券、投資信託を担保にしてローンを貸し出してくれることです。使途は制限されていないので、生活費に使うこともできますが、最も効果的なのは、ローンを使って再投資することで、最大で預入額の約2倍のレバレッジをかけて投資ができます。もちろんローン金利を払う必要はありますが、それを差し引いても十分リターンを狙えるくらい低率です。
同じリターンの額を得るためには、リスクを抑えて投資額を増やすほうが、資産の安全性とリターンを得られる可能性はぐっと上がるというものです。
ローンを使ってレバレッジを効かせられるようになると、投資額が大きくなるので、投資対象のリスク・リターンを減らしても、同額のリターンを得ることができます。リターン率よりも額が重要、リスクは極力減らしたい、という人はローンをうまく組み入れたほうが得策です。
超富裕層向け商品のリターンは必ずしもよいというわけではなく、金融機関では一般のお客様にも公募投資信託をすすめています。またおすすめの方法が特別というわけでもありません。金融機関が公表しているデータを見れば、むしろ、お客様自らが運用会社の直販を利用して購入しているケースのほうが、全体的にはパフォーマンスがよいという指摘もあります。
この情報をしっかり理解できていれば、こんな面倒なプロジェクトをやる必要はなかったのかもしれません。まさにその通りで、ローリスク・ハイリターンの特別な提案というものはありませんでした。特別な商品と言えるとしたら、流動性が悪く、最低預入額が大きく、コストは高く、リスクも高いけどハイリターンのもの。そういうのはだいたい私募ファンドで49人しか申し込めないので、選ばれた人しか買えない、みたいな特別感はくすぐられます。それが自分の投資目的に合致するかどうかは別問題です。
超富裕層向けと呼べる商品のメリットは、お客様の投資ニーズやタイミングに対してきめ細かくオーダーメイドで対応したり、お客様の要望に対して会社の在庫ストックにないものを探してきたりする、「担当者の対応」そのものなのです。
僕のプロジェクトの結論もまさにここにまとめられています。まず担当者の経験や知識が顧客の求めるレベルに達しているか、顧客のニーズに沿うだけでなく、時には言葉にしていなくても顧客の意をくんだ金融商品の提案ができるか、効果的なローンの提案ができるか、僕は必要としていませんが、一緒に食事をしたりゴルフに行ったりする付き合いができるか、そもそも信頼できると思われるか、いろいろとありますが、リレーションシップマネージャーとかクライアントアドバイザーとか呼ばれる顧客担当はとても重要な役割を担っていると思います。
一方で、顧客の方でも一定の投資知識と判断力が求められます。プライベートバンクだからと言って常に顧客のことだけを考えてくれるわけではなく、高い手数料のものや複雑なリスクの高い商品を提案されることもあります。そういう時、納得がいかなければ簡単に引き下がらないことが肝要です。言われたことをそのまま鵜呑みにせず、手数料はある程度は顧客担当の裁量に任されている部分があるので、しっかりとコストを聞いたり、他の提案を促したりする必要があります。
顧客と銀行では情報格差と経験格差が大きく開いているため、自分が比較、理解し、納得するためにも、プライベートバンクを決める際は、最初から一行に絞るのではなく、何行か並行して提案と条件を出してもらいながら、ベストな銀行と付き合うのがおすすめです。顧客担当とは長い付き合いになるので、もし合わないと思ったら早いタイミングで替えてもらった方がお互いのためにも良いと思います。嫌がらずにスムーズに代えてくれます。