最近はプライベートバンクという名称を使わずに、ウェルスマネジメントと呼ぶ金融機関が増えていますが、どちらにしても「プライベートバンクの投資一任勘定」という言葉がひとり歩きしていて、富裕層にしか使えない素晴らしいサービスである、みたいに書かれています。それなら自分で確かめようと思い、いくつか本を読んでみたり、銀行で話を聞いたりしてみました。
プライベートバンクの投資一任勘定って何なの?(理想論)
プライベートバンクならではのサービスとして、投資一任勘定というのがあります。コストが低くリスクとリターンが最適なポートフォリオを作ってくれて、グローバルの金融市場の中から最適な金融商品を選んでくれて、定期的に見直しながら運用して増やして戻してくれる、というフルオーダーメイドの夢のようなサービスです。似たようなサービスとしては日本の証券会社で売りに売りまくって、手数料取りすぎと問題になっているSMA(Separately Managed Account)やファンドラップがあります。
SMAやファンドラップとの違い
簡単に切り分けると、投資一任勘定とSMAは同じもので、個人のリスク許容度に応じてポートフォリオを自由に組むことができて、運用商品もグローバルにファンドだけでなく、債券、株式、コモディティやヘッジファンドの直接投資まで選択できることになっています。ポートフォリオ設計の自由度が高いので、担当者が投資方針からライフプランからいろいろ相談に乗ってくれて、最後に運用方法を決めていく形を取ります。もちろん投資一任なので、タイミングを見たリバランスだけでなく、ポートフォリオ自体を適宜見直すダイナミックポートフォリオ組みまでサービスの範囲内です。
コスト面では、投資一任勘定の手数料が毎年一定額引かれます。もろもろ含めて年間で預入資産の1~2%というところでしょうか。大和証券のSMAは4.4%と法外な手数料ですが、どちらかというと例外です。株式、債券、ファンドを買う時の購入手数料はかかりませんが、ファンドを組み入れた際の信託報酬はかかるはずです。
ファンドラップは、ポートフォリオは、安定・バランス・成長など、リスクリターンに応じて数種類のポートフォリオの中から選ぶようになっていて、選べる運用商品はオーソドックスな株・債券のファンドが軸で、ヘッジファンドやコモディティといったオルタナティブの品ぞろえは少なめ。何よりポートフォリオを構成する投資信託を選ぶことができません。ファンドラップ用~と書かれた投資信託を組み込んでいることが多いですが、中身は市場で普通に買えるものと大差ありません。コストは、ファンドラップ自体の運用報酬年1~2%に加えて、中に組み込んでいる投資信託の信託報酬の両方がかかります。
投資の最低金額と厳しい現実へ
必要な金額について言うと、ファンドラップは最低投資金額100万円~というものもありますが、プライベートバンクの投資一任勘定は最低10億円が一つの基準のようです。実はプライベートバンクの足切り最低預入額UBSの2億円とかクレディスイスの5億円とか預けても、上に書いたような投資一任勘定の理想論的運用はできないみたいです。何行か話を聞いた中で、一行はそもそも完全カスタムオーダーの投資一任運用はやっていないということでした。