読書・評論

ピケティ「21世紀の資本」を読む~第2部

はじめに~第1部のまとめはこちら。記憶にしっかりとどめるべく、淡々と遅々と大著を読み、気になったところを書いていきます。

第2部 資本/所得比率の動学

第3章 資本の変化

資本/所得比率は、18,19世紀には国民所得の6-7年分、1914-1950年に3分の2近く減少し2-3年分、1945-2012年には倍以上に増加していて5-6年分に戻り、みごとなU字曲線を描いている。

資産構造に関しては21世紀と18世紀の資本は全然違っている。農地がだんだんと住宅、企業資本、金融資本にとってかわられている。

資本は常にリスク志向で、はじめは起業精神にあふれているが、十分に蓄積すると必ずレントに変わろうとする。貸し手やその子孫にとって、公的債務の水準が非常に高いことは、イギリス王室が彼らに課税して支出を補った場合に比べればずっとよかった。マルクスは公的債務が民間資本の手駒だとみていた(国債の利払いで生活している人が多かった)。

20世紀、公的債務は公的支出を増やして富の再分配を行い、社会で恵まれない人々に利益をもたらすという見方が登場した。19世紀、貸し手には気前よく利払いが行われ、民間財産はそれで増加していたが、20世紀にはインフレで埋もれてしまい、返済も価値が減少したお金で行われていた。おかげで財政赤字は国にお金を貸した人の資金で埋め合わされ、増税をせずに済んだ。

イギリスは過去2回―最初は19世紀初頭のナポレオン戦争末期、次は第二次大戦後―公的債務はGDPの約200%にまで達した。債務の履行を拒否する直接的方法か、高インフレにする間接的方法のいずれかでデフォルトを起こさなければ、巨額の公的債務の返済には非常に長い期間を要する。

イギリスは紙幣増刷に過度に依存せずに戦費を賄おうとした結果、1950年にはGDPの200%になる公的債務を抱えていた。1950年代の年率4%のインフレ、1970年代の年率15%のインフレを経てようやく、GDPの50%に減少した。