読書・評論

人新世の「資本論」斉藤幸平 まとめ

「中核」である先進国は、「周辺」である新興国の労働力だけでなく、エネルギーや食糧などの自然資源も搾取している。新興国の生産活動、環境破壊の一部は先進国の輸出品向けである。しかし「外部化」できる安価な労働力、安価な自然がもうなくなりつつある。

資本主義=経済成長と気温上昇1.5℃未満は両立しない。「緑の経済成長」は成立しえず、「脱成長」しかない。先進国のCO2は減っていても、新興国の経済成長によりCO2は増えている。電気自動車が2040年に200万台から2億8000万台に増えるが、削減されるCO2量はわずか1%にすぎない。1970年代後半の生活規模にまで落とせば対処可能。

危機はこれまでの振る舞いに自省を促すきっかけになるはずが、技術・専門家・GAFAというイデオロギーのために想像力欠如になっている。気候変動についても、技術が問題を解決してくれるはずと思い込んでいる。

本来は商品の「使用価値」が経済活動の目的なのに、GDPで測る経済成長=資本主義では、測定可能な「価値(=お金)」を増やしていくことが最優先事項になる。資本主義は資源を私有することで希少性を生み出し、商品の「価値」を増やす。その結果、人々はますます困窮する。使用価値を生み出さない広告や金融が高給の一方、社会の再生産に必須なエッセンシャルワークが低賃金で人手不足になっている。