2020年2月22日に発表されたバークシャーハサウェイ社の2019年度業績報告、いわゆるバフェットからの手紙ですが、そのうちネットで公開されている部分を読んでみました。昨年は一章を使って「米国への追い風」と題して一般投資家にも役立つメッセージがありましたが、今年はそこに該当する部分はバフェット亡き後の会社がどのように引き継がれていくかに重点が置かれています。加えて、取締役と取締役会、その他経営に関係する委員会について、バフェットなりの考えとあるべき姿について2ページ使ってじっくりと論じています。
では株主ではない一般投資家が役立ちそうなメッセージは、と探してみると、
今後の金利水準を予測することはバフェットの仕事ではないし、来年や10年後の金利の予測はつかない。ただ言えることは、もし現在の金利水準が今後10年続いて、法人税率が低いままなら、株式は時間とともに、長期の債券よりもずっとよいパフォーマンスをもたらすことはほぼ間違いないだろう。
ただし、このバラ色の予想には、未来は何事も起こりえることに注意が必要だ。50%以上の下げが起きることもあり得る。しかし長年にわたる米国への追い風と複利の力があれば、株式の長期投資はとても良い選択になる。その際、借りた金を使うのではなく、しっかりと感情をコントロールすることが大切だ。
50%以上の下げがありえる、という部分は、昨年の手紙ではむしろ高い株価について注意を促していました。
ばかげたほど高い株価で買うことは、永遠ではないとはいえ、長期間にわたってマイナスの結果をもらたす。(2019年版)
今年はどちらかというと将来の下げを見越した意見になっているようです。どちらにしても最後は、株式最高!というまとめなのは変わりませんが。
バフェットからの手紙は和訳されて書籍にもなるくらいなので、どれだけ投資家に役立つメッセージがあるのかと思っていたら、14ページ中1ページもなかったのでずいぶん肩すかしでした。バークシャー社の株主へあてたレターですからね、当然と言えば当然です。その他、2020年のバフェットからの手紙の中で、小ネタ的に面白かった部分をピックアップしてみます。
バークシャーハサウェイエナジー(BHE)というアイオワの電力会社があるみたいなんですが、2028年まで基本料金を上げない宣言しているのに対して、アイオワの競合はBHEより61%も高いと言っています。なぜBHEが安いのか?ここがすごいところなんですが、なんと風力発電のおかげだというんです。2021年にはBHEの風力発電でアイオワ州の全顧客の消費電力をまかなえるようになるようで、クリーンエネルギー活用のおかげですでにテックジャイアント5社のうち3社がBHEの顧客になっています。
バークシャー社は、オイル添加剤を作っているルーブリゾール(Lubrizol)という会社を2011年に買収しています。そのフランス工場が火災にあってしまい、建物も大被害で、ビジネスにも大きな影響が出てしまいました。幸いなことに保険が下りることになり、その損害はだいぶ緩和されることになりましたが、ほっとしたのもつかの間、ルーブリゾールが契約していた大きな保険会社の一つがバークシャー社が所有しているものだとわかったそうです。バフェットはそのことに気づかず、「施しをするとき、右の手のしていることを左の手に知られないようにしなさい(マタイ6:3)」という聖書の言葉で締められています。