会社売却して社長を降りるとなると、社員に説明したり、取引先に説明したりと、いろんな場面で本件を話すことが増えます。そういうときに聞かれることを列挙してみました。まあ社長でも従業員でも、若くして退職するとなると同じような質問をされると思います。
「次何されるんですか？」
これは20人に話して20人に質問されました。不思議なのは「何かする＝新たな仕事」であって、ずっと旅行してますとか、ずっとゴロゴロしてます、というのは許容されないみたいです。最初はまじめに、「何もしません、一生ダラダラ過ごします」と答えていましたが、そう言うとみんなそろって居心地の悪そうな顔をして、「そうは言っても次のビジネス考えてるんじゃないですか？」「ぜったいヒマで何かやりたくなりますよ」と畳みかけてくるんです。何もしないでゴロゴロして過ごすということが、後ろめたいことだと言わんばかりです。
毎回そのやり取りをするのがおっくうになってきて、最後のころは「ちょっと休んで旅行でもしたら、次のビジネスを考えています」と言うことにしました。そうすると会話がきれいにまとまるんです。セミリタイアってサラリーマンのあこがれの職業だと思ってましたが、どうやら違ったみたいです。みんな仕事したいんですかね。
「さみしいでしょ」
僕のような会社を去る側の人間は、辞めることによるリスク分析は退職前の相当期間ですでに終わっていて、退職を伝えるときには、むしろ新しい未来を描いて次の挑戦に期待しているので、今までやってきたことから離れるさみしさはほとんどなく、むしろ会社関係の断捨離ができてすがすがしい気持ちすらあります。会社に残る側の人間は、退職という状況が唐突に起きるのと、その人が会社からいなくなるという喪失感がさみしさにつながるんだと思います。なので会社に近い人からときどき言われました。
創業者と歴代経営陣に対して、一族で家業を継続することができずに申し訳ないという気持ちはあっても、自分の精神状態含め会社にすべてを捧げてきたので、もうやり残したこともできることもありません。事業と仕事内容、社員や関係する人々に対しても未練はありません。創業者たちに申し訳ないという気持ちについても、僕よりも有能でやる気もある社長に引き継げたんだから、会社の維持発展という意味ではむしろほめてもらえるんじゃないかと、自画自賛しているところもあります。
「なんで退職するんですか？」
事情を知らない人にとってはまさに青天のへきれきだったので、この質問もよく聞かれました。「以前から持病があって、社長継続が厳しいので、いったんやめて治療に専念します」と言えばほぼ皆さん納得してくれましたが、ときどき「何の病気ですか？」とかぶせてくることがあるので、その時は隠すことなく「メンタルです」と伝えています。
売却すると決めてからずいぶん明るくなったので、昔から面識ない人には「本当にメンタル病んでるんですか？」と失礼なことを言われるときもありましたが、そういう時は通院投薬していますと事実を伝えました。なんか身体の病気よりもメンタルの病気の方が同情されるような気がします。僕は自分の弱さが申し訳ないと思ってしまいますが。
「いくらで会社売れたんですか？」
社員と取引先数名に聞かれました。遠回しに聞かれるケースが多いですね。でも答えられるわけないので、「夫婦二人が一生暮らせるくらいのお金にはなりました」と言ってます。これ聞いてどうするんだろうとは思います。
